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不足額は2,000万円!?金融庁のWGが発表した報告書の真意とは

2019年6月初頭、金融庁の市場WG(ワーキング・グループ)がある報告書を発表しました。その報告書は、通常、そうした種類の資料に対する世間の反応とは大きく異なり、広く耳目を集めるものとなりました。とくに注目されたのは、老後に必要となる資金(老後資産)として示された「不足額の総額は単純計算で1,300万~2,000万円になる」という記述です。



前後の文脈やその真意について深掘りされることなく、「老後資金が2,000万円不足する」ということのみが各メディアで報じられると、多くの人は驚きとともに批判的な反応を示しました。その大半は「政府の年金行政にだまされた」といった趣旨の批判です。ただ一方で、この報告書が本当に伝えたかったことは何だったのでしょうか。そこで今回は金融庁のWGが発表した報告書の真意を考察してみましょう。

批判の矛先は「公的年金制度」そのものへ

(写真=Khongtham/Shutterstock.com)
(写真=Khongtham/Shutterstock.com)

日本には、老後の生活を支える仕組みとして「公的年金制度」が導入されています。公的年金制度は、加齢などによる稼得能力の減退・喪失に備えるための社会保険です。いわゆる「防貧機能」がその中心的な役割になります。とくに日本の雇用慣行を考えると、現在でも定年退職というシステムが機能しており、そのための備えという位置づけです。

定年退職を迎えると、通常は収入がなくなります。もっとも近年では、定年退職年齢の伸長や定年後の再雇用なども進んでおり、必ずしも収入がゼロになるわけではありません。ただ現役時代より低減する可能性は高く、それを補うために公的年金制度が用意されています。しかし今回の報告書では、「公的年金だけでは老後の安心を得られない」ということが明言されました。そのため批判の矛先は制度そのものへと向けられています。

市場WGが発表した報告書の概要とは

(写真=son Photo/Shutterstock.com)
(写真=son Photo/Shutterstock.com)

もともと年金だけで老後の生活がまかなえないことは、周知されていたはずです。しかし退職金と年金があれば老後の生活が安泰だとイメージしていた人は多かったのかもしれません。「年金は安心」というバイアスがかかった気持ちのなか、「老後2,000万円も不足する」といわれれば、そのショックも大きくなってもやむをえないでしょう。

では報告書にはどのようなことが書かれていたのでしょうか。その中身について解説します。

テーマは「高齢社会における資産形成・管理」

報告書のテーマは「高齢社会における資産形成・管理」です。そのため前提となっているのは、日本の人口動態をベースにした「長寿化」「単身世帯等の増加」「認知症の人の増加」など、これから起こりうる諸問題になります。そうした事情を踏まえたうえで、「収入」「就労」「退職金」などの状況を提示し、老後に必要な金額の推計を掲載しているのです。

試算額は間違ったものだったのか?

問題となっている部分に着目すると、以下のように記載されています。

“夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯では毎月の不足額の平均は約5万円であり、まだ20~30年の人生があるとすれば、不足額の総額は単純計算で1,300万~2,000万円になる”
出典:金融審議会市場ワーキンググループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」

ただ、この後に以下のようなことも記載されています。

“この金額はあくまで平均の不足額から導きだしたものであり、不足額は各々の収入・支出の状況やライフスタイル等によって大きく異なる”
出典:金融審議会市場ワーキンググループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」

そのため資産額についてもデータに基づいたロジカルな試算であると考えられるでしょう。

重要なのは年金に関する捉え方

本報告書をきちんと読んでみると、最も伝えたかった内容は老後に2,000万円用意するべきということではなさそうです。

・長く生きることに応じて資産寿命を延ばすことが必要になる
・老後の生活において公的年金以外でまかなわなければいけない金額が試算してみる

このような2つのポイントが重要なのではないでしょうか。私たちが先入観をもってしまっている年金に関する捉え方を考え直してみる時代に突入してきているといえるでしょう。

事実と結果から適切に判断すること

本報告書では、「長期・積立・分散投資による資産形成の検討」についても言及されています。断片的に報道されている内容だけで「公的年金制度そのものが失敗したのだ」と訴えたり、政府を批判したりするだけでなく、自らの資産形成に役立てるヒントとするべきでしょう。本報告書をさまざまな視点で検討かつ吟味し、個々人が必要な対策を講じられるよう留意したいものです。


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