50歳前後のアーリーリタイアで、その後の生活資金を考えるとき、早期退職の割り増しを含めた退職金の存在は無視できません。
2000年代に入って、多くの大手企業はグローバル化の名の下で、人材の新陳代謝や固定費削減などを目的に、早期退職優遇制度の導入を加速してきました。あくまで人件費の高い中高年社員をエグジットさせる施策ですが、この仕組みを逆手に取って、アーリーリタイアの助け舟とすることも可能です。
ただし、割り増しを含めた退職金は、属している会社や就いているポスト次第で大きく変わります。さらに、受け取った後の運用によって老後資金は大きく差が開きます。
人手不足でも増え続ける早期退職募集
景況感が弱くなってきた最近も、有効求人倍率は1.6前後で高止まりし、相変わらず人手不足の状況が続いています。そんな中でも、大手企業はリストラの手を緩めません。定年前の退職を募る早期退職募集は、2019年上半期だけで17社・延べ8,200人に達し、2018年の同時期を上回っています。
経営不振のIT・電機大手だけでなく、業績好調なはずの大手製薬各社も、一斉に早期退職者を募集しています。バイオや遺伝子工学など急速に事業環境が変わる中で、バブル世代や団塊ジュニアなどキャッチアップできない人材の退出と若手への切り替えを促し、一挙に成長分野へ舵を切ろうというわけです。
これ以外にも、恒常的な制度として早期退職優遇を人事制度に組み込み、人材の新陳代謝を促す企業も少なくありません。
では、早期退職に応じると、退職金はどの程度上乗せされるのでしょうか? 一般的に退職金は、在職年数に応じて支給額が決まりますが、ほとんどの企業では早期退職でも支給率を加算して、定年時並みの退職金を支給しています。さらには、これに平均して給与2年分前後を上乗せします。
ちなみに、年収が800万円だとすると、上乗せ額は1,600万円前後になります。企業によっては4年分を割り増しにするケースもあり、製薬会社のように年収ベースの高い企業だと、上乗せ額は5,000万円前後に達します。
現実は厳しいビジネスパーソンの退職金事情
1990年代は、平均で3,200万円を受け取れた退職金ですが、2000年以降、一貫して抑制の憂き目に遭い、今や2,000万円を切る水準まで落ち込みました。しかもこれはあくまで平均であって、勤めていた企業や業界によっても大きくばらつきがあります。例えば、同じ銀行でも5,000万円以上が支給される大手銀行もあれば、地方銀行では支店長でさえ1,500万円を切ることも珍しくありません。
最近では同じ企業でも、出世次第で大きな格差が生じるようになってきました。またここ数年で、ポイント制度を導入する企業は半数を超えました。ポイント制は、役職とその在職年数に応じてポイントを付与する制度で、企業への貢献度によって退職金にメリハリを付けるのが制度の狙いです。平社員で終わるのと、部長職まで出世したのとでは、1,000万円以上の開きが生じる企業もあります。
退職金で足りない分は自ら資産形成を
公益財団生命保険文化センターの調査によると、夫婦2人の余裕がある暮らしに必要な生活費は月35万円と試算されています。50歳でリタイアした後から、65歳の年金支給開始までの15年間、必要な資金は6,000万円を超えます。その上に、ライフイベントに応じた出費が上乗せされるのです。
50歳以降に働かないのなら、退職金で足りない分はそれまでに自分で資産形成しなければなりません。できれば、賃貸不動産や金融商品で収入源を確保しておくのがベストです。
勘違いしやすいのは、退職金がご褒美でも余分なお金でもないということです。大金を手にして気持ちが大きくなり、家のリフォームや海外クルーズなどにつぎ込んでしまうケースも少なくありません。くれぐれも心しておきましょう。
さて、あなた自身は、一体いくらの退職金を受け取れるのでしょうか? 人事規定などを調べた上で、きっちりとシミュレーションしておき、アーリーリタイアのプラニングに役立てましょう。昇進の可能性などは、あくまで慎重に考えておくことをお勧めします。
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