前2回の講義では、日本ではインフレ政策が進行していること。それにより、年金の実質上の価値も下がっている現実を伝えてきたFP黒松氏。今回は具体的な対策として、不動産投資を紹介。「現物資産の不動産はインフレに強い」とよくいわれますが、専門家としてプラスαのメリットも教えてくれました。
※本記事は2019年6月9日に開催された「名古屋 日本経済の未来と不動産投資」イベントの黒松雄平氏の講演のダイジェスト版です。
現金を不動産に変えた瞬間、評価額が大幅に下がる
ここまで日本のインフレ政策などについてお話ししてきました。こういった流れの中で、注目したいのが不動産投資です。一般的に不動産投資のメリットとしては節税効果がある、保険代わりになる、インフレに強いなどがありますが、ポイントをかいつまんでお話ししていきます。
まず節税効果ですが、最近になって相続税の基礎控除の引き下げが行われました。当然ながら相続税を払う人が増え、相続税の額が増える傾向になりました。これにより富裕層が何をするかというと……、やはり相続対策に懸命になるわけです。そして、相続対策をしやすいのが「不動産を所有すること」なんですね。
例えば、現金で2千万円を持っていたら相続財産は2千万円になります。つまり、2千万円が相続税の対象になるわけです。ところが、この2千万円の現金を不動産に替えた途端、相続税の評価額が約500万円まで落ちます。この額は条件によって変わりますが、「現金を不動産に変えた途端に約4分の1まで落ちる」と覚えておくとよいでしょう。
不動産投資には、生命保険・医療保険・終身年金の機能がある
次に、不動産投資の生命保険機能について解説します。不動産投資で金融機関から融資を受けるときに団体信用保険、いわゆる団信に加入する。これは、契約者に万が一のことがあったら残債が保険で支払われる仕組み。そのため、不動産投資には生命保険機能があるといわれています。
加えて、最近の団信には、医療保険的な要素もあります。亡くなったときに加えて、三大疾病、あるいは11の疾病に対応するといった内容に変わってきています。そのため、最近は不動産を「人生をガードするためのもの」と位置づけるケースも増えています。
一方で、今の日本の一般の保険商品にはろくなものがない。理由は、多くの保険が日本の国債で運用しているからです。利回りがつかないもので保険商品組成する、これはおかしな話です。
また最近では、収入保障保険が日本でよく売れています。これは契約者に万が一のことがあった際に、遺族に対して、一定額がずっと支給され続ける保険です。
投資用マンションを購入すれば団信がついてくるわけですから……、収入保障保険や終身年金の毎月の保険料がいらなくなります。その分貯蓄や投資ができる。だから保険商品ではなく、不動産に切り替えるという方々がとても増えているわけです。
補足すると、保険商品と不動産投資の一番の違いは、インフレに対応しているか否かです。保険商品で支給されるお金はインフレに対応していない。不動産の場合は、賃料も物件価格も物価に合わせて上がります。ですから、不動産の団信というのは「インフレ対応型の収入保障保険」みたいなイメージを持っていただくと、分かりやすいと思います。
国内外の機関投資家が不動産を積極的に買っている
最後に不動産投資を検討するときに意識したいポイントについてお話します。大きな経済の流れを作るのは機関投資家の動きなのでそこを確認しておきます。
まず、国内の大手生保の動きですが、これまで彼らのほとんどは、日本国債中心で運用してきました。しかし、国債利回りが下がっているため、不動産を買い漁っている生保会社もある。彼らは不動産で出た収益で生保を蘇生しようとしているんです。それなら、私たちは初めから直接不動産を買った方が効率的です。わざわざ生保を挟んで間接的に不動産を買って、多額の手数料を取られる必要はないわけです。
後は世界中の機関投資家も不動産を大量に買っている。例えば、マレーシアの公的年金、あるいはノルウェーやアゼルバイジャン(編注:旧ソ連の構成国)の政府系ファンドもそうですね。世界中の有力ファンドが日本の不動産を買いに来ています。なぜなら、日本の不動産が世界に比べれば割安だからです。
過去に、「日本の不動産はキャピタルが取りにくい」と言われたのは20年間ずっとデフレが続いたからです。でも、このデフレトレンドは終わっていて、上昇トレンドがずっと続いています。そして、これが続くと、今の不動産の価格帯は通用しなくなります。
ましてこの先日本に IR (カジノを含む統合リゾート)が入ってくると、さらなる価格上昇に振れる可能性もある。IR が入ってきた国を見てみると、マカオにしてもシンガポールにしても不動産価格は急騰しています。それにより、一般の方々が不動産を買えなくなってきています。日本(IRと関連するエリア)も同様の流れになる可能性があるので、今のうちに不動産購入に動いたほうがいいと考えられます。
※本記事は2019年6月9日に開催された「名古屋 日本経済の未来と不動産投資」イベントのダイジェスト版です。
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