
国内の不動産市況はここ数年好調を維持し続け、三大都市圏では騰勢をさらに拡大、地方も2019年にはようやくプラスに持ち直しました。
背景には2020年オリンピックを含めた再開発、ネット通販拡大に伴う物流インフラ建設、インバウンドに伴うホテル需要などさまざまな条件がプラスに働いていますが、下支え要因として「日銀によるREIT(不動産投資信託)買い入れ」の存在も忘れてはいけません。一方で、日銀のスタンスには最近変化も見られつつあります。
この記事では、不動産市場におけるREITの位置づけや、日銀の買い入れがREIT相場ひいては不動産市場に与える影響および今度の動向について解説します。
日銀のREIT買い入れが不動産市場を支えるメカニズム

REITは不動産投資法人が発行する投資証券で、投資法人は発行を通じて不動産ビジネスに必要な資金を調達、一般投資家には賃貸収入・不動産売買による収益が分配されます。
日銀が買い入れているREITは既発のものであり、投資法人のバイイングパワーに直接結びつくわけではありません。それでも、買い入れがREITへの安心感を高めたことで、結果的に投資法人の資金調達を円滑化させ、バイイングパワーを支えています。ちなみに2018年のIPO・増資は0.7兆円と高水準を維持しています。
加えてREIT投資法人がかかわる再開発事業エリアとその周辺で不動産購入を誘発し、価格上昇効果を発するとされています。
買い入れ残高累計はすでに5,000億円
2008年のリーマンショックに伴う経済危機・金融危機から脱却するため、主要先進国の金融当局は緩和的措置を矢継ぎ早に打ち出し、金利調整だけでなくリスク資産購入といった「未知の領域」にも踏み出し始めます。
日銀も2010年10月に包括的な金融緩和政策を発表、あくまで臨時措置としてETF(上場投資信託)4,500億円およびREIT500億円の購入を盛り込みました。
一時的とされたREIT買い入れはその後アベノミクスに引き継がれ、継続政策に衣替えします。当初年間300億円とされた買い入れ目標額も、金融緩和強化のため徐々に増額、現在では900億円に達しています。
日銀保有のREIT累計残高は時価換算で5,000億円を超え、J-REIT時価総額(12兆円)の4%前後に達しています。
日銀が買い入れ中止?身構える証券・不動産業界

ここ数年目標額上限(900億円)に張り付いていた日銀のREIT買い入れ額ですが、2018年は550億円と目標額を4割下回りました。
こうした動きに対し証券・不動産業界関係者の間では、「日銀は一部エリアでバブル時代に匹敵するほど過熱気味の不動産市況を冷ましたい意向が強く、買い入れ額を抑えた」との声が根強いようです。減額は一時的で将来のREIT下落局面に備えたものと考えてよさそうです。
ちなみに2019年9月の決定会合(日銀の最高意思決定会議)でも、REITの買い入れ目標は当面据え置かれました。政権サイドへの配慮もあり、目標見直しは簡単ではないようです。
日銀は買い入れを継続するのか
金融関係者の中には、「日銀のREIT買い入れはすでに役割を終えた(前日銀理事)」との意見も少なくありません。買い入れによるリスク資産投資への「誘い水」効果はもうすでに充分だ、というわけです。目標額の見直しを示唆する声も、少なくありません。
実際に弊害も出始めています。最近は運用難に苦しむ地銀が、REITの下落リスクは低いと見越して積極的な買いを仕掛けています。日銀の買い入れだけならまだしも、金融機関の「相乗り」がREITの価格形成をゆがめ始めたのです。
REIT相場の買い入れは、金融機関の不動産融資姿勢にも緩みをもたらしているようで、不動産融資残高はアベノミクススタート以来3割増まで積みあがっています。バブル期とは比べようもありませんが、日銀金融レポートではレッドシグナルが出ています。
すでに買い入れ策スタートから10年近くたち、REIT買い入れの位置づけも変容しつつあります。日本以外の国は買入資産圧縮の段階に入っており、今後日銀がどう動くかに関係者の注目が集まります。
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