「プライベートカンパニー」というと、株式会社などの法人を意味すると思われがちですが、サラリーマンが行う不動産投資などの個人事業主としての副業も含まれます。「プライベートカンパニー」とは、一般的には同族会社や資産保有(又は管理)会社などを指しますが、コンサルタント・不動産投資家の石川貴康氏の考え方によれば、別の収入の「母体」を意味します。税金や社会保険の負担が重くなる一方の日本。サラリーマンがその負担を軽減しながら賢く資産形成をしていくには、プライベートカンパニーの活用が鍵を握ります。
副業が別の収入の「母体」と公に認められるには?
サラリーマンが不動産投資を副業で行い、それを利用して課税所得を減らすには、国税庁から不動産投資が本業以外の別の収入の「母体」であると認められることが前提です。それにより、不動産投資に関わるさまざまな経費計上が認められやすくなります。さらに、不動産投資が赤字の場合は、不動産所得(又は事業所得)が赤字であると扱い、勤務先の会社(本業)からもらう給与所得と損益通算することで節税が可能となります。
不動産投資が本業以外の別の収入の「母体」であると認められるためには、一般的に、不動産投資が繰り返し継続的なものであることが必要です。もっとも、不動産投資が別の収入の「母体」として認められるか否かは税務署次第、ケースバイケースというのが現実です。
一般的に考えて、長期的な家賃収入を目指して不動産投資を行う場合は、別の収入の「母体」であると判断されるケースが多いでしょう。
「不動産所得×プライベートカンパニー」で節税するまでの流れ
ここまでお話ししてきたことを踏まえて、サラリーマンの方が「不動産投資×プライベートカンパニー」で節税するまでの流れは、次のステップになります。
1.継続的な家賃収入を得ていく
2.不動産投資に関わる経費計上を行っていく
3.確定申告をする
4.(赤字の場合)払い過ぎた税金が戻ってくる
上記のうち「1. 継続的な家賃収入を得ていく」は前項で解説した通りです。一般的な不動産投資はこれに該当すると考えられます。残りの手続きはしたことのない方からすると、「本当にできるだろうか…」と不安になる面もあるかもしれません。しかし、実行してみると難易度はそれほど高くないはずです。多くのサラリーマンが不動産投資をすでに行っていることは、そのひとつの証明と言えるでしょう。
不動産投資で計上できる主な経費とは?
次のステップの「2. 不動産投資に関わる経費計上を行っていく」ですが、不動産収入に対して国税庁で明確に必要経費と定義しているのは次の4つです。
● 固定資産税
● 損害保険料
● 減価償却費
● 修繕費
上記以外の不動産に係わる経費は、ケースバイケースの判断になります。一般的に認められやすいとされるものは次の通りです。
● 事務所代(自宅の場合兼事務所は事務所部分のみ)
● 書籍代・セミナー代・通信費など
● 不動産会社の方などとの交際費
● 旅費・交通費 など
これらの経費などを差し引いた手のこりが不動産投資に関する「所得」(以下、本稿では不動産所得として扱います)となり課税されます。当然ながら、経費が多くなるほど「所得」は少なくなります。さらに、減価償却などによって帳簿上「不動産所得」が赤字なら、その分は給与所得など一定の他の所得から差し引くことができます(損益通算)。
青色申告を選択したい場合は「開業届」と「青色申告承認申請書」の提出を
「3 . 確定申告をする」については、確定申告をする際、白色申告および青色申告のいずれかを選択することができます。このうち、控除メリットのある青色申告を行うには、税務署へ対して事前に開業届出書を提出する必要があります。一見、大変そうに感じるかもしれませんが、記入する用紙は一枚しかないのでそれほど手間ではありません。記載内容は、氏名・住所・マイナンバー・屋号などの基本情報に加えて、事業内容の簡単な説明くらいです。
青色申告をするとさまざまなメリットがありますが、そのうちのひとつが青色申告特別控除です。①5棟以上の独立家屋の貸付けの場合や、貸与することのできる独立した室数がおおむね10室以上の規模の貸間やアパート等については、最高65万円、②それ以外の場合は、最高10万円を、所得金額から控除することができます。
税務署に開業届を出したとき、事細かにチェックされるのではないか…と不安に感じる方もいるかもしれませんが、通常であれば、書類に不備がなければ細かいやりとりがないのが一般的です。
なお、青色申告を選択する場合は、申告しようとする年の3月15日までに、「青色申告承認申請書」の提出が必要です。
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強引すぎる経費計上をすると否認されるリスクも
あとは、確定申告が税務署から承認され、払い過ぎていた分の税金があれば還付されます。還付金は後日、指定した口座に振り込まれます。注意したいのは、経費計上できるのはあくまでも不動産投資に紐付く経費のみという点。過去には、不動産収入の数倍もの経費を計上して、車両費、事務所費・通信料・雑費が大幅に否認されたケース(国税不服審判所平成23年3月25日裁決など)もあります。心配な場合は税理士などに相談した上で、計上するとよいでしょう。
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