不動産投資における市況、つまり投資対象となる不動産の価値が高いか安いかを測る上で参考になるものの一つに、「東証REIT指数」があります。株式投資における「日経平均」のようなものです。
東証REIT指数とは、東京証券取引所(東証)に上場しているREIT(不動産投資信託)の全銘柄の時価総額を加重平均したもの。東証は2003年4月から公表を開始し、基準日とした2003年3月31日の時価総額を「1,000」に設定して現在の値を算出・公表しています。
ここでは、REITを切り口に、不動産市場のメカニズムや動向について見ていきます。
■REIT(不動産投資信託)とは
まず、REIT(不動産投資信託)とは何かからご説明します。
投資信託とは、多くの投資家がプロフェッショナルにお金を預けて(信託)運用する金融商品。運用対象には、株式や債券、金などがありますが、主に不動産を対象とするものが「不動産投資信託」です。英語で“Real Estate Investment Trust”と表記し、略して“REIT”(リート)と呼ばれています。日本版REITは「J-REIT」とも呼ばれています。
REITが狙うのは、不動産の値上がり益よりも、不動産から得られる賃料収入。そこから経費を差し引いた収益を投資家に分配します。
不動産物件は一般的に高額ですが、REITのメリットは1口数万円という少額から低リスクの分散投資ができる上に、いつでも売買できる手軽さが挙げられます。
一方、デメリットとしては、市況(価格)が大きく変動することで精神的な負担を感じたり、自然災害などで予想分配金が大きく下落することもあります。
■REITと不動産市場のメカニズム
では、REITの収益を左右する不動産の市況は、どういった要因で変動するのでしょうか。
新型コロナウイルス感染拡大前の2019年の時点においては、2020年に開催予定であった東京オリンピック・パラリンピックの会場設営を含めた再開発、EC市場の伸びによる物流インフラ建設、およびインバウンド観光客の急拡大に伴うホテル需要などのプラス要因がありました。そして、見逃せないのは、日本銀行によるETF(株価指数連動型上場投資信託)と並ぶJ-REITの買い入れがあります。
2008年の「リーマン・ショック」に伴う経済・金融危機から脱するべく、主要先進国の金融当局・中央銀行は金融緩和的措置だけでなくリスク資産の購入に踏み切りました。日本銀行も2010年10月に飽和的金融緩和政策として、ETFの4,500億円、およびJ-REITの500億円を上限とする購入を決定。その後、「アベノミクス」施策に引き継がれて毎年300~400億円ほどのJ-REITの購入を続け、2020年9月末時点で保有分の時価総額は7,000億円を超え、J-REIT全体の約5%を占めています。これがJ-REITの市況を下支えしてきたわけです。
しかし、コロナ禍となってからは人の流れが抑制され、ホテルや商業施設などの集客が大きなダメージを受けました。こうした不動産を対象とするJ-REITは大幅な下落を余儀なくされました。
■東証REIT指数の推移
そこで、東証REIT指数はどのように推移してきたのかを、東証の「株価指数ヒストリカルグラフ」で見てみます。
「株価指数ヒストリカルグラフ」 参照リンク
https://quote.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/hist_index&basequote=155_2018&begin=2018/5/14&end=2021/04/28&mode=W&histtype=CSV&f1=&f2=&f3=&t1=2021&t2=04&t3=28&x1=2021&x2=04&x3=28&term=3&type=1
まずは直近の3年間です。
日本にも新型コロナウイルス感染が広がり始め、「ステイホーム」「3密」が叫ばれ始めた2020年2月上旬頃から一気に落ち始め、3月19日には直前のピークから半減したことが見て取れます。しかし、3月19日を底として再び上昇を始めました。
そんなコロナ禍の著しい影響も、15年間というロングレンジで見てみると見方が変わります。
2007年に顕在化した「サブプライム住宅ローン危機」を発端として世界金融危機が発生すると、J-REITは暴落し、続く2008年のリーマン・ショックが重なって直前のピークから73%も下落しました。その後、先述のとおり日銀の買い支えなどもあって回復基調となり、コロナ禍直前の2019年11月5日には2011年11月28日の2.8倍まで上昇します。その後のコロナ禍での落ち込みは、世界金融危機時の3分の1程度で留まり、直後にまた上昇に転じていることがわかります。このことから、REITは世界的な金融危機やパンデミックと大きな出来事からダイレクトに影響を及ぼされても、その後の回復政策などによって確実に再上昇してきたと言えるでしょう。
ここで、今後の動きを予測するために、直近3カ月の推移を詳しく見てみます。
2021年になって、3月初旬にやや落ち込んだもののほぼ一貫して伸び、4月に入ってなだらかな状態になりつつあることがわかります。背景には、コロナワクチン接種の普及による経済活動の正常化見通しによる景気回復期待や、金利急上昇の懸念が後退していることなどが挙げられています。「コロナの影響は限定的」と見られています。
一方、J-REIT市場では個人投資家の資金流出が続いています。東証REIT指数が1年ぶりの高値圏にあるため、利益確定などのために売却(逆張り)する個人投資家が増えているからです。また、コロナ禍の終息は未だ見通せず、3度目の緊急事態宣言の延長も決まりました。J-REITの市場環境は不透明といえます。投資を行うに当たっては、REITのリスクを考慮する慎重な姿勢が望まれるでしょう。
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