
人生100年時代と叫ばれる昨今。長生きすることは楽しいことばかりではありません。現代の雇用制度で将来暮らしていくための資産は足りるのか。気になるのはお金のことでしょう。今回は、生涯収入と支出について考察します。
WHO(世界保健機関)が発表した平均寿命の伸び
WHO(世界保健機関)が2018年に発表した2016年度の平均寿命の統計によると、日本は世界一の長寿国で、男女の平均寿命は84.2歳。 前回は83.7歳で2位スイスと僅差でしたが、今回は1歳近い差をつけて1位となりました。
第1位 日本 84.2歳
第2位 スイス 83.3歳
第3位 スペイン 83.1歳
第4位 オーストラリア 82.9歳
第5位 フランス 82.9歳
ちなみに、女性の平均寿命は87.1歳と、第2位のフランス85.7歳を1.4歳も上回っています。この平均寿命の延びはますます加速される見込みです。ロンドン大学のリンダ・グラットン教授による著書『LIFE SHIFT(ライフシフト)』では、2007年に生まれた日本人は107歳まで生きる確率が50%あるとの試算がなされています。
長寿時代がやってくることは、光と影があります。その影の最大の心配事はお金のことではないでしょうか。以降で「生涯賃金と生涯支出はどれくらいになるのか」「その差はどの程度になるか」について、モデルケースを上げつつ解説します。
生涯収入はいくら?就労賃金+公的年金で計算しよう
独立行政法人労働政策研究・研修機構が2017年に発表した最新のユースフル労働統計によると、2015年の大卒・大学院卒の生涯賃金は以下の通りです。
【生涯賃金】
大卒・大学院卒
- 男性:2億7,000万円
- 女性:2億1,670万円
男性について退職金と雇用延長による収入を含めた金額は以下です。
【就労賃金】
大卒・大学院卒
- 男性:3億2,640万円
退職金/雇用延長による収入を見込んだケース
上記にプラスして公的年金を考慮しなければなりません。2019年1月現在の制度では、原則として65歳から老齢基礎年金が受給でき、さらに会社員として働いた場合は、2階部分として老齢厚生年金も受給できます。例えば、23~60歳まで働いた場合の老齢厚生年金受給額は年額約138万円です。また、結婚している夫婦2人世帯の場合、妻が23~30歳まで7年間勤めた後に退職し、60歳まで専業主婦となった場合の老齢厚生年金受給額は年額約80万円となります。
138万円+80万円=約218万円を65歳から20年間もらえると仮定すると、約4,360万円です。つまり、生涯賃金と公的年金を合わせた生涯収入は、就労賃金約3億2,640万円+公的年金約4,360 万円=約3億7,000万円となります。
【生涯収入】
大卒・大学院卒
- 男性:3億7,000万円
退職金/雇用延長による収入込み
65歳から老齢基礎年金、老齢厚生年金を受給(23~60歳まで働く)
配偶者が23歳から7年間勤めた後に退職し60歳まで会社員の配偶者となったケースの税引き前・社会保険控除前の金額
生涯支出はいくら?
一方、一生のうち使う金額である生涯支出はどうでしょうか。総務省の家計調査によると、2016年における2人以上の勤労世帯の消費支出は月平均30万9,591円、1年にして約371万円、それ以前に所得税や社会保障費が天引き、もしくは納付しますので、これらを含めると約490万円の支出となります。仮に就職してから60歳まで38年勤務した場合の支出は、累積約1億9,000万円です。
また、60歳以降の夫婦2人の生活費は総務省統計局によると月額約22万円(住宅費は含まず)です。そうすると、85歳までの25年間で約6,600万円となり、賃貸住宅に居住の場合は、家賃がそれに加わります。次に教育資金、住宅資金も考えることが必要です。さらに、自動車を所有するケース、結婚式や新婚旅行などの費用、家電製品などの耐久消費財などを考慮しますと、生涯支出合計は、約3億2,700万円となります。
また、子どもが1人増えるごとに約1,000万円は支出に含めておきたいところ。さらに、生命保険に加入している場合は、平均約1,000万円です。これを加算すると、生涯収支はおおむね相殺されるでしょう。仮に首都圏に住居を構える場合、住宅費は格段に上がりますし、生活費ももう少し上がる可能性があります。つまり、生涯収入から生涯支出を引いた金額は、マイナスになる可能性がおおいにあるのです。
【生涯支出の大まかな内訳】
- 23~60歳/2人以上の勤労世帯の支出:1億9,000万円
- 60~85歳/夫婦2人の消費支出:6,600万円
- 居住費:3,900万円
- 教育費:975万円
- 自動車関連費:1,500万円
- 結婚費用:500万円
- 耐久消費財費:200万円
合計:3億2,675万円
生涯収入と生涯支出の差を縮め、黒字にする方法は?
方法はいくつか考えられます。一つは、夫婦共働きで、ダブルインカムとすることです。これを実現していくには、政府が子育て支援の充実を行い、女性にとっても働きやすい環境を作っていくことが求められます。また、男性も子育てに積極的に参加し夫婦2人で家庭基盤の充実を図ることが必要な時代になることは間違いありません。
もう一つは、資産運用を行うことでお金に働いてもらう仕組みを作ることです。低金利の時代が続いていますが、上手に運用することで生涯収入は見違えるほど異なってきます。特に若い世代ほど、資産運用を始めることで時間を味方につけられるため、複利効果を十分生かすことができるでしょう。
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