マンションなどの建物は、年月が経つにつれ古くなるので価値が少しずつ減ってしまいます。このような資産を減価償却資産といいます。
減価償却資産を取得するためにかかった支出費用は、取得した時に全額を必要経費として計上するのではなく、その資産の使用可能期間の全期間にわたって分割して必要経費と計上するべきものとされています。減価償却資産を取得するためにかかった金額を一定の方法によって各年分の必要経費として配分していく手続を減価償却といいます。
この減価償却費が、不動産投資で節税のキーポイントになります。減価償却費を正しく計上すれば、税金の支払いを安く抑えることができます。
出典:国税庁「No.2100 減価償却のあらまし」
投資不動産を減価償却する目的
以下で紹介する節税対策は、給与やその他の所得があり、一定期間の保有後に不動産を売却することを前提としております。給与所得が無く不動産を本業にしている方や、保有し続けて家賃収入を得る目的の方は当てはまりづらいことを先にご理解ください。
節税対策として減価償却を経費として計上すれば、不動産所得をマイナスにできます。そして不動産所得のマイナスを、給与やその他の所得と合算することで課税所得を圧縮し、税金を安く抑えることができます。
不動産所得のマイナスを給与等のプラスで合算することを損益通算といい、きちんと法律上認められた控除です。すべての所得で損益通算ができるわけではありません。損益通算行えば納税額を軽減することができますので、必要な手続きを忘れないようにしましょう。
経費として減価償却費を計上できるのは法定耐用年数までと決められています。法定耐用年数とは、その資産が使用可能とされる期間を意味し、国税庁の耐久年数表によって詳細に決められています(減価償却資産の耐用年数等に関する省令)。
中古不動産の場合も建物の種類や構造・用途によって耐用年数が法律で決められていますが、耐久年数の計算方法が変わります。詳しくは後に解説します。なお、土地は劣化せずに価値が持続するので減価償却の対象とはなりません。
減価償却費の計算方法
減価償却の計算方法は「定額法」と「定率法」の2種類があります。どちらの計算方法を用いるかによって、経費の計上方法が変わります。
参考:国税庁「No.2106 定額法と定率法による減価償却(平成19年4月1日以後に取得する場合)」
定額法
定額法は一定額を毎年計上していく方法です。基本的に減価償却の金額は毎年同じ額となります。
定額法による減価償却費の計算方法は、以下のようになります。
減価償却費 = 取得価額 × 定額法の償却率
取得価額とは、建物の購入代金や建築代金をはじめ、購入時にかかった税金や仲介手数料などが含まれます。なお次に掲げるような費用については、減価償却資産の取得に関連して支出した費用であっても、取得価額に算入しないことができます。
(1) 次のような租税公課等
イ 不動産取得税又は自動車取得税
ロ 新増設に係る事業所税
ハ 登録免許税その他登記又は登録のために要する費用
(2) 建物の建設等のために行った調査、測量、設計、基礎工事等でその建設計画を変更したことにより不要となったものに係る費用
(3) いったん結んだ減価償却資産の取得に関する契約を解除して、他の減価償却資産を取得することにした場合に支出する違約金
(4) 減価償却資産を取得するための借入金の利子(使用を開始するまでの期間に係る部分)
引用元:国税庁「No.5400 減価償却資産の取得価額に含めないことができる付随費用」
定額法の償却率や次の定率法の償却率は下記、国税庁のホームページから確認できます。
国税庁「減価償却資産の償却率表」
定率法
定率法は取得価額から前年の減価償却費の総額を差し引いた額に償却率を掛け合わせて算出する方法です。減価償却の額は取得した年の負担が最も大きく、年々減少していくのが特徴です。
定額法による減価償却費の計算方法は、以下のようになります。
(取得価額-前年度までの償却費の総額)×償却率
※ただし、定率法の償却率により計算した償却額が「償却保証額」に満たなくなった年分以後は、毎年同額となる
定額法は、毎年同じ金額の償却費を経費計上することになります。一方、定率法を用いると、初めの年度で償却費が高く節税効果が見込めます。早い段階で購入費用が講習できる反面、計算方法が複雑になりがちで、年数が経つほど節税効果は薄れてきます。
中古不動産の耐用年数
先に述べたように中古不動産の場合耐用年数の計算方法が変わります。
中古不動産の耐用年数は、法定耐用年数ではなく、取得した時移行の使用可能期間として見積耐用年数を算出します。ただし、その中古不動産を取得するために支出した金額が同じ新築価額の50%に相当する金額を超える場合には、耐用年数の見積りをすることはできず、法定耐用年数を適用することになります。
見積耐用年数は、次のように計算します。
・法定耐用年数の全て経過したもの
法定耐用年数 × 20% = 見積耐用年数
・法定耐用年数の一部を経過したもの
(法定耐用年数-経過年数) + (経過年数×20%) = 見積耐用年数
なお、これらの計算により算出した年数に1年未満の端数があるときは、その端数を切り捨て、その年数が2年に満たない場合には2年とします。
出典:国税庁「No.5404 中古資産の耐用年数」
では実際に計算してみましょう。
法定耐用年数は下記の通りになります。
<建物>
構造・用途 | 細目 | 耐用年数 |
木造・合成樹脂造のもの | 住宅用のもの | 22年 |
木骨モルタル造の物 | 住宅用のもの | 20年 |
鉄骨鉄筋コンクリート造・ 鉄筋コンクリート造のもの | 住宅用のもの | 47年 |
引用:国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」(一部抜粋)
・法定耐用年数の全て経過している場合
仮に木造で経過年数が30年の中古不動産を取得したとします。
見積耐用年数は22年 × 20%=4年 となります。
・法定耐用年数の一部を経過している場合
仮に鉄骨鉄筋コンクリート造で経過年数が10年の中古不動産を取得したとします。
(1) 法定耐用年数から経過した年数を差し引いた年数
47年 - 10年 = 37年
(2) 経過年数10年の20%に相当する年数
10年 × 20% = 2年
(3) 見積耐用年数は
37年 + 2年 = 39年 となります。
まとめ
減価償却は、取得金額と不動産の構造に応じた耐用年数を用いて償却費を求め、不動産の価値を毎年減少させて計上する必要があります。減価償却を求める際には一定額を毎年計上していく定額法と、取得価額から前年の減価償却費の総額を差し引いた額に償却率を掛け合わせて算出する定率法の2つの計算方法があります。判断しかねる場合は専門家に相談してみることもおすすめします。
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