不動産を売却する際、そのタイミングが年内になるか翌年の1月になるかで、大きく収支が変わることがあります。その理由は、売却益や売却損にかかわる税制が次のようになっているからです。
12月に予定していた売却を1か月遅らせることで税率が半分に
不動産を売買することで得た利益にかかる譲渡所得税・住民税は、所有期間によって税率が異なります。5年以内の場合は短期譲渡所得となり39.63%、5年超の場合は長期譲渡所得となり20.315%です。売却するタイミングによって、かかる税金が2倍近くにもなるのです。
所有期間は売却した年の1月1日の時点で判定します。購入日から5年後の12月に売却すると短期譲渡所得ですが、1か月待って翌年1月に売れば、長期譲渡所得になるわけです。
たとえば、2014年12月に2,000万円で購入したマンションを、約5年後に2,500万円で売却したとします。譲渡所得は2,500万円-2,000万円の500万円です。2019年12月に売った場合は短期譲渡所得となり、税額は約200万円ですが、2020年1月の場合は長期譲渡所得になるため約100万円と、約100万円もの差が出ます。
※売買にかかる諸経費や減価償却は考慮していません
マイホームの場合は10年所有でさらに半分になる
マイホームの場合はさまざまな税制優遇があります。よほど大きな譲渡所得が発生しない限り、課税されることは少ないと言って良いでしょう。まず居住用財産の特例によって、譲渡所得から3,000万円が控除されます。所有期間による差はありません。
たとえば3年前に5,000万円で買って住んでいるマンションが、7,500万円で売れたとします。自分が住むための物件でなければ2,500万円の短期譲渡所得が発生し、納めるべき税額は約1,000万円です。しかし特例によって所得から3,000万円が差し引かれるので、税金は発生しません。
この特例をもってしても、数十年前に親が購入し、相続で取得したような自宅は、地価の上昇によって譲渡所得が発生することがあります。このようなときには、軽減税率の特例を使えます。所有期間が10年を超える場合は、所得6,000万円までに対する税率が14.21%となる優遇措置です。
この他にもマイホームを買い換えたときには、課税を将来に繰り延べられる特例や、売却損が出た場合に給与所得などの税金と相殺することで還付を受けられる特例などがあります。これらも売却や建物の取り壊しを行った年の1月1日時点における所有期間が、要件の1つです。
年末の引っ越しを考えている持ち家派の人は、時期による譲渡所得の違いを検討してみると良いかもしれません。
損益通算による節税も
以上の通り、マイホームとその他の不動産では、売買にかかる税金が大きく異なります。家賃収入を得るための収益不動産はマイホームではないので、基本的に売却益に対して20.315%の長期譲渡所得税か、39.63%の短期譲渡所得税がかかります。
不動産の譲渡所得は他の所得と相殺(損益通算)できない分離課税です。株式投資で大損してしまったり、自営業者が本業で赤字を抱えてしまったりして、これらの損失が不動産の譲渡所得を上回ったとしても、譲渡所得に対する税金は納めなければなりません。
ただし不動産の売買による利益と損失であれば、損益通算は可能です。いくつも収益不動産を持っている人であれば、売却のタイミングを同じ年(1月1日~12月31日)にそろえることで、税金をコントロールできることがあります。
たとえば、所有している物件Aを買いたいという人がいて、売ると100万円の短期譲渡所得が発生するとします。一方、おととし購入した物件 B の市場価格は、購入価格を100万円ほど下回っています。
物件Aを売却し、その翌年以降に物件Bを市場価格で売却すると、税引き前の収支はプラスマイナスゼロです。しかし物件Aの売却には短期譲渡所得の約40%がかかるので、トータルで40万円のマイナスとなります。
もし物件Aを売却し、同じ年の12月末までに物件Bを市場価格で売却したら、損益通算によって短期譲渡所得はプラスマイナスゼロとなり、税金はかかりません。売却による収支をトントンで収めることができます。
不動産の譲渡所得は12月31日までの所有期間で税額が大きく変わることがある
収益不動産の売却益にかかる譲渡所得は、売却した日の1月1日時点における所有期間によって税率が2通りに分かれます。また売却を複数回行った場合、同じ年(1月1日~12月31日)であれば損益通算が可能です。売却時期がひと月ずれるだけで、最終的な収支に大きく差が出る場合があるので、税金を含めたシミュレーションが必要です。
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